ゴー宣DOJO

BLOGブログ
泉美木蘭
2015.3.8 15:57

大人のスマホ遊びと子供のLINE


還暦を過ぎてからスマホでFacebookをはじめた母親が、
このごろ操作に慣れてきたらしく、盛んに更新している。
ただ更新するだけなら、実家の風景や、飼い犬の写真が
見られるので、安心したり嬉しかったりするんだけど、
他人と交流している様子もすべて筒抜けになっている
世界なので、娘としては心配でハラハラする面もある。

どうやら、「『友達』を増やす」という目的のコミュニティに
入ったようで、その結果、先日は、

「友達認証してすぐに『会おう』とか『電話で話そう』
と言ってくる男性が何人かいらっしゃいますが、
Facebookを出会い系と勘違いなさるな!
世が世なら切腹を言い渡すところですぞ!」

と、ブチ切れた書き込みとともに、
忍者村みやげの日本刀のおもちゃの写真をアップしていた。
姐御感が出過ぎていて、心臓バクバクした。
お、おかあさん、こわい。

最初は
「自分で投稿はしないけど、あんたのが読みたいから
フェイスブックのアプリを入れて欲しい」
と頼まれたので入れてあげたのだけど、
私の母親だし、絶対いつか投稿しはじめると思ったので、
念のため『友達』以外には投稿が公開されないように
設定しておいたのだった。
良かったと思う。


ところで、Facebookは10代には敬遠されるらしい。
私や私の母親のような、親の世代が、実名で、交流の様子も
筒抜けで使っている世界なので、ここに参入すると、
自分の親に自分の交友関係や、遊びの様子が知られて
しまうのがイヤ、というのが大きな理由だそうだ。
好まれるのは、LINEの、より密室化したネット空間
しかし、この密室に、知らない人間、壊れた人間、犯罪者
やましい大人などが簡単に紛れ込んでくる。
うちの母親のように、変な奴をバッサリシャットアウトする
判断力もないうちに。

LINEなんかやらなくても良い友達関係は作れます!
と言って毅然とスマホを取り上げたいなら、
まず、我々大人の、大した用もないのにスマホをいじる姿が、
『みっともない』という常識にならなきゃいけないんだよね・・・。

ある大学の先生は、大学生がスマホを持っているのも問題で、
学内からスマホを撲滅したいとまで言っていた。
なんでもかんでも「写真」と「検索」で済ませてしまうため、
会話に表現力がまったくない学生が増えているらしい。
どこかに出掛けて美しい風景を見た、という話ひとつとっても、

「先週、ここへ行ったんですよ、ほらこれ!」

と、スマホのなかの写真を見せて終わり。
どんな風景で、自分がどう感動し、なにを思ったかという話が
まったくないのだ、と。
写真を撮るのに一生懸命で、スマホばかりのぞきこみ、
実物をちゃんと体験していない
ということもありそうだ。

結果、論文を書かせると、無味乾燥でなんの表現力も、
思考の形跡もない文章ばかりなのだという。
すごくヤバい状況である。
スマホに飲まれちゃいけない。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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